家具道具室内史学会

<設立趣旨>

 



 家具道具室内史学会を設立します
 
 家具道具室内史学会とは、家具・室内意匠と生活道具の歴史を研究することを目的とする学会のことです。全部つなげると長くなりすぎるので、家具道具室内史学会としました。あたらしい、これからの学問研究の分野です。


 ではなぜ家具・室内意匠史と生活道具史を一緒にしたのか。この点について少し説明いたします。


 いうまでもなく家具は椅子・テーブルや箪笥・長持のことですし、室内意匠は建物内部の構成やデザインのことです。一方生活道具は、生活に使われる道具一切のことです。したがって本来は家具も入るわけですが、一般的には家具は別だと考えられています。


  これは近代以降、日本にも西洋の椅子・テーブルの文化が入ってきたためです。それまでは、欧米や中国でいうような家具はありませんでしたから、家具と生活道具とははっきり分けられるものではありませんでした。


 たとえば欧米や中国では食卓はテーブルで、これはれっきとした家具です。ところが、近代以前の日本では小さな膳や盆が食卓でした。しかし盆は欧米や中国では家具とは見なされていません。


  これは欧米や中国の場合、建物と家具がそれぞれ独立しているからです。建物だけではがらんどうで、ベッドや椅子、戸棚などの家具がなければ生活できません。これに対してわが日本は、押入や床の間・違い棚のように、家具が建築の中に組み込まれていることと、椅子やベッドを使わないユカ座の起居様式でしたから、家具が無くても困らなかったのです。床には畳が敷いてありますから、布団を敷けば寝られますし、盆だけあれば食卓になります。このため欧米や中国のような意味での家具は、あまり発達しなかったのです。したがって欧米流の家具・室内意匠史を目指そうとすれば、当然、貧弱なものになってしまいます。


  しかし日本には日本独特の家具のあり方があり、独自の家具文化として発達してきています。その意味では特に建築史の場合、家具・室内意匠を除外しては、建築を本当に理解することができません。


 また欧米や中国流の家具文化が発達しなかったこと自体、日本の住宅や社会のあり方を示す非常に示唆に富む大きな問題です。そこからはこれまでになかった視点から日本の歴史や社会史の諸問題を剔出することができる筈です。


 それに家具が発達しなかったとはいえ、どの時代にも、時代時代で、その時代特有の家具が出現しています。そしてそうした家具は、その時代の生活と、その背景をなす政治・経済・社会・文化について雄弁に物語っています。この点は生活道具の場合も全く同様ですが、日本の場合、家具と室内意匠と生活道具が互いに密接な関係にありますから、別々にしていては解らないことや、欠け落ちてしまうことがたくさん出てしまいます。


  生活道具については、これまでは主として民俗学や考古学で取り扱われてきていますが、今言ったように、日本の場合、家具や建築と密接な関係にありますから、一緒にして扱う方が、より正しく、より広く、より深く見ることができるのです。


  そこで家具・生活道具史としたのです。これによって欧米式ではない、日本独自の新しい学問をうちたてたいと考えています。この分野は、家具・建築史、民俗・考古学はもちろん、文献史、美術史、技術史、社会史、文化史をはじめとしてさまざまな方向からの取り組みが可能ですし、大きな成果が上がるものと思います。したがって日本だけでなく、外国を研究対象としている方、あるいは外国の方でも、いろいろな意味で研究に取り組む価値はあると思います。


 とにかく未開拓の沃野なのですから、鍬の入れ方次第でどんな豊かな収穫でも得ることができます。ご入会下さって、一緒に道を拓いて行こうではありませんか。

 

                    2008年8月

 

   発起人代表  小泉和子

 


 

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